HSCってどんな子?不登校になりやすい理由を解説

こころ

不登校の理由はHSC気質?

なぜ学校が無理なんだろう?

不登校のお子さんがいる親御さんなら、誰もが一度は考えることだと思います。
子どもに聞いても、返ってくるのは

…わからない・・・・

何かを隠している?実はいじめられてる?そう思うかもしれません。
実際そういう場合もあるでしょう。
しかし、事実として、本当に子ども自身も理由が「わからない」ことは少なくありません。

わが子が中学2年生で学校に行けなくなった時、くりかえし何度も理由を尋ねる私に、娘は「わからない」と言いました。

本当にわからない、と。

どうしてみんなが普通に過ごしている学校が自分には無理なのか、わからないから困っているというのです。

それでも理由はあるはずだと私は思い悩み、不登校の理由を見つけるのに必死になっていました。
理由がわからないと学校に戻れないと思ったからです。

「甘やかしすぎたのか‥‥」
「私の育て方がよくなかったのか‥‥」

自責の念で押しつぶされそうになる日もありました。

「やさしいね、うちならとりあえず引っ張ってでも連れてくよ。大丈夫、そうすればすぐ行くようになるよ」
――ママ友から何度かそう言われました。励ましてくれてる、そうわかりながらも、傷付く自分がいました。

私も一度、無理やり学校に連れて行ったことがあったのです。
でも、「大丈夫」でも、「すぐ行くようになる」こともありませんでした。

学校が近づくにつれて青ざめていく娘の顔、どんどん下がっていくつないだ手の体温……
このまま校門をくぐらせたら、大げさでなく本当に消えてしまいそうで到底できず、そのまま引き返しました。

娘は言いました。

「私にとって学校は、柵のない屋上みたいなところ。そこで苦手なドッジボールをして逃げ回ってる感じ」

下に落ちるもしれない恐怖と緊張感のなか、投げられるボールにあたらないよう必死に逃げ回っているようだというのです。

この時、下の2つのことを私はようやく理解しました。

  1. 娘にとって学校はしんどくてつらい場所
  2. 学校が無理な理由は本人にもわからない

校門前の娘の様子をみたので、「学校がつらい場所」であることは納得せざるをえませんでした。

「理由がわからないこと」は本当なのだと理解はできたものの、その事実は私(母)を何よりも不安にさせました。

分からないことが本当に怖い…どうすればいいのか見当がつかない

こうした気持ちに共感して下さる方も多いのではないかと思います。

理由がわからなければ対処のしようがないからです。進むべき先が決められないからです。


分からないことが本当に怖かった私は理由を求めて、本を読み、ネットを検索し、どんな時に嫌な気持ちになるのか、どんな状況が辛いと感じるのか、、、本人と何度も話をしました。

そうしてあれこれ探っているうちに出会ったのが、「HSC(ひといちばい敏感な子)」という概念でした。
HSCという存在を知ったとき、「これが原因かもしれない」と思ったのです。

学校が苦手と感じていた娘の具体的な様子に見事にあてはまったからです。

HSCの子が学校で感じるストレスとは?












実際、多くのHSP・HSCさんとお話しすると、「不登校でした(です)」「学校は嫌でした(苦手です)」という声は多く聞かれます。

同じように、学校に行きたくない、その理由は説明しにくい(わからない)と言うお子さん、もしかしてお子さんはHSCかもしれません。

注目

学校に行けない理由をくりかえし尋ねたり、わからないことが不安で質問攻めにしたり・・・これは私自身が安心したいための行動でした。結果としてHSCであることがわかり、前に進めたのですが、やり方としてはよくなかったと反省しています。まずは娘の無理だという思いを受け止めるべきでした。
ただ「なんで?」と「教えて」と聞くだけだったので、「拷問のようだったよ(笑)」…と当時を振り返る娘…

聞き方、伝え方って、本当に大事です。またこちらも別記事にしますね。

 HSCってどんな子?

もしかして、うちの子、ほかの子よりも繊細かも?

そう感じたことはありませんか?
もしかしたらそれはHSCの気質によるものかもしれません。

HSCとは「Highly Sensitive Child」の略で、「ひといちばい敏感な子」と訳されます。
生まれつき感受性が強く、音・光・人の感情などに敏感に反応する特性を持った子どもたちのことを指します。

HSCは病気ではなく、「気質」のひとつです。
全体の約15〜20%の子どもがHSCであると言われており、決してめずらしいものではありません。

HSP・HSCは心理学的な概念であり、医学的な診断名や病名ではありません。そのため「正式な診断基準」はなく、医療機関で「治療の対象」として扱われるものではありません。

以下のチェックリストで特徴を確認してみましょう。

HSCの特徴チェックリスト









これらを見て、あ!わが子のことだ、と感じることが多いとしたら、お子さんはHSCの傾向があるかもしれません。

具体的にはたとえば、うちの場合は以下のようなことがありました。

  • 車のクラクションを異様に怖がり、立ちすくんでしまう
  • 人が入り乱れている朝の下駄箱では人がほぼいなくなるのをじっと待つ
  • 運動会のスタートのピストル音が怖くて耳をふさぐ
  • 洋服のタグはもれなく切らないと着れない
  • 砂の感覚が苦手で砂遊びをするのを嫌がる・・・・etc

その他今思えばHSCの気質だからか!と納得できるエピソードは多いです。※別記事で紹介予定

上記のチェックリストの内容を「気質」として持って生まれてきたのがHSCです。

“気質”とは、生まれ持った感覚の強さや反応の仕方の傾向を指します。
これは“性格”や“性分”とは異なり、育て方や経験で大きく変えることが難しいものです。
そのため、『大人になってからHSPになった』ということはありません。『大人になって気が付いた』ということはあります。

もう少し詳しくチェックしたい方はこちらのサイトを参考になさってください。
ちなみに娘はスコア:117(-52~140) HSP度:【強】(私はスコア32…) 

 感受性の強い子が学校で抱えやすい「しんどさ」

HSC気質があると学校が無理なの?

HSCの子どもたちは、ひといちばい刺激に対する感受性の高いアンテナを持っている子たちだと言えます。

つまり、五感がとても敏感です。

そして人の感情にも反応しやすいため、学校という場が非常にしんどい、疲れる場所に感じられることがあります

なぜなら、学校はとても刺激が多い場所だからです。

学校は、多くの子どもにとって“当たり前”の場所であっても、HSCにとっては刺激の宝庫なのです。
それら一つひとつが神経をすり減らす要因になります。

  • チョークの音、笑い声、叱責の声、チャイムの音などが絶えずある
  • 先生や友達など、複数の人間と絶えず交流しなければならない
  • みんなと一緒に同じことを半強制的にしなければならない
  • 誰かが怒られていたり、泣いていたりする状況がめずらしくない
  • 発表などで人に注目される機会がある

この他にも、人によってはにおいや光のまぶしさが気になることもあります。
そうした刺激だらけの場所での1日は、五感が鋭く感受性がひといちばい豊かなHSCにとって、とてもとても「しんどい場所」になってしまうのです。

感受性の強さ、感じ方にも個性があり、一概にHSC気質だからといって学校が無理というわけではもちろんないと思います。

「自己肯定感の低下」が不登校につながることも

もう一つ、HSCの子どもたちが学校生活において困難を感じやすい大きな理由に、自己肯定感の低下があります。

HSCは、音や光、人の感情など、周囲の刺激に敏感です。
そのため、教室のざわめきや先生のちょっとした表情、他の生徒の発言などにも強く反応してしまい、エネルギーを消耗しやすい傾向があります。
結果として、集中力が続かなかったり、思うようにパフォーマンスが発揮できなかったりすることも少なくありません。
それなのに周囲を見渡すと、ほかの子たちは当たり前のように日々の学校生活をこなしている‥‥

みんなは普通にできているのに、なんで自分だけがこんなに疲れるんだろう・・・
頑張ってるのに、どうしてうまくいかないの?

HSCの子はこうした問いを自分の中で何度も繰り返し、劣等感を抱くことがあります。

また、日本では、多様性が認めれつつある現代においてもまだまだ「みんなと同じであること」で安心感を得る風潮が根強いように感じます。

感じ方が違うHSCが「違っていてもいい」「そのままの自分でいい」と認められる機会が少ないと、敏感であることそのものを「悪いこと」のように感じ、自信を失ってしまいます。

そうやって、「人と違う自分」への違和感自己否定が積み重なり、自己肯定感がどんどん下がっていってしまうのです。

そうなるとますます学校がつらい場所になっていく――そんな悪循環に陥ってしまうこともあるのです。

「無理を重ねてきた証」としての不登校

不登校は、決して「甘え」や「逃げ」ではありません。

HSCの子どもたちは、自分の中の違和感や疲労に気づいていても、それを親や先生に伝えることが難しかったり、伝えたとしても理解されないことを恐れて我慢してしまったりすることがめずらしくありません。

そうして、「みんなと同じように頑張ろう」とすればするほど、無理をしてしまいます。

結果として、身体症状や情緒不安定、不登校というかたちで、ようやく「限界」が表に出てくることがあるのです。

「理由はうまく言えないけど学校には行けない…」
そんなときは、子どもが無理を続けた結果、心と体が悲鳴をあげたサインかもしれません。

不登校というかたちで、「自分を守った」のだとしたら…
大人の視点だけで「問題」と決めつけず、子どもの感じている世界に目を向けることが、何よりも大切だと感じます。

不登校のHSCが頑張ることは、「つらい場所(学校)に無理して行くこと」ではありません。
疲れた心身を休めながら自分の気質を受け止め、そんな自分を認めていけるとよいですね。

そして親御さんには、お子さんに「そのままのあなたで大丈夫だよ」という安心感を伝えていってほしいと思います。
自己肯定感を取り戻せるようなサポートができれば、それはHSCたちの大きな回復の力になります。

最後に

私自身、わが子が学校に行けなくなったとき、最初は戸惑いと不安でいっぱいでした。

なぜ? 
どうすればまた通えるようになるの?

その答えを必死で探しました。

でも、「HSC(ひといちばい敏感な子)」という気質を知ったことで、初めて、それまでのことがすべてつながった気がしたのです。

教室の音、人の感情、環境のちょっとした変化――
一般的には何でもないようなことでも、わが子にとってはとても強い刺激で、毎日が「がんばりの連続」だったのだと気づきました。

学校に行けなくなったのは、「がんばれなかったから」ではなく、ずっとがんばり続けて限界を超えてしまったからだったのです。

そして、わが子のように「理由はうまく言えないけど、学校がつらい」そんなHSCの子は、きっと少なくないのではないかと思っています。

HSCだからこそ、学校生活がしんどいこともあるんだ

不登校は、弱さではなく“感じやすい力”が限界を教えてくれたサインなのかもしれない

まずは親御さんのその理解が、HSCたちを救います。

HSCの子どもたちは、決して“弱い子”ではありません。
人の気持ちに寄り添い、周囲の変化を敏感に感じ取る豊かな感受性を持っています。

私が学校でしんどく感じていたのは、周囲の変化を敏感に感じ取る豊かな感受性のためだったんだ

本人のその気づきが自分自身を救います。

親御さんと、本人のそうした特性への理解が、未来の「居場所」をつくる最初の一歩になると、私は思っています。

HSCの子が学校で感じるストレスとは?












このチェックリストは、HSCの子どもが日常生活の中でどんなことにストレスを感じやすいかを知るための手がかりになります。

いくつかでも当てはまる項目があれば、子どもが日々どんな感覚の中で頑張っているのかを想像し、理解するヒントになりますよ。

参考文献:エレイン・アーロン博士:『ひといちばい敏感な子』