不登校でも大学に行ける?

学校に行けていないことが、将来にどれくらい影響するの?

このまま高校も通えないなら、進学はあきらめるべき?
そんな不安を抱えている方も多いかもしれません。
特に、HSCという繊細な気質をもつお子さんの場合、集団生活や刺激の多い環境のストレスから不登校になることは珍しくありません。
結論からお伝えします。
学校に行けない(行けなかった)からといって、将来まであきらめる必要は決してありません。
不登校になると、社会の道から外れてしまったような感覚になるのはとても良くわかります。
でもそれは間違いです。
今、社会も変化し続けており、特に教育や働き方の面では柔軟な選択肢が増えています。

進学・就職の在り方も多様化して、学歴以外の経験やスキルも評価される場が増えていますね
もちろん社会の変化を待つだけではなく、自分のペースで一歩を踏み出すことも大切です。
自らも学校に行けないことをただのマイナスとせず、前向きにとらえていけるよう、少しずつでいいので進んでいきましょう。
「大学に行ける?」という問いに対しても、答えは『行けます』です。
もちろん入試に合格する必要はありますが、
今の時代、通信制高校や高卒認定を経て大学に進学する人も少なくありません。
進学の選択肢は、以前よりもずっと広がっているのです。
大学は「通える場所」になる?

実際、私の娘もある日「大学に行きたい」と言い出しました。
現在、娘は通信制高校(通学コース)に通っています。
単位取得のために最低限の登校はしていますが、学校という場はまだまだ得意ではなく、決して積極的に学校に通っているわけではありません。
そんな娘が大学に合格したとして、

通い続けられるの?大学生活を楽しめるの?
という不安がありました。
でも結論としては、「通える可能性は十分にある」と感じています。
「大学なら通えるかもしれない」と思える理由を以下にまとめました。
高校までと大学の「仕組み」の違い
小・中・高と大学では、「通う意味」や「過ごし方」が大きく異なります。
高校(通信制以外)までは決まった時間に登校しなければなりませんが、大学では自分で時間割を決め、授業も選ぶことができます。苦手な時間帯や形式の授業を避けることも可能です。
また、集団行動を強要される場面も少ないです。
- 毎日通う必要がない(週2〜4日で通学完結するケースも)
- 授業開始時間が遅め(午前10時や午後からのスタート)
- 自分で時間割を組める
- 出席よりもレポートや試験の評価が重視される
- グループ行動よりも個人行動が中心
- 自分の関心や目標に合わせて深く学べる
このように、大学は「人と同じであること」よりも「自分で考え、行動すること」が重視される場です。
「みんなと同じように登校する」「刺激の多い学校にずっといる」ことが難しかったHSCにとって、自分のペースを大切にできる大学は非常に相性が良いのです。
HSCの特性と大学生活の相性
HSCの子は、五感が敏感で、刺激の多い環境に強いストレスを感じます。
学校にいることで心身ともに疲れてしまうのはそのためです。
しかし、HSCたちは決して「学ぶこと」が嫌いなわけではありません。
むしろ、好きなものに対する集中力や探究心は驚くほど強く、安心できる環境さえあれば、高いパフォーマンスを発揮することができます。
大学では時間割や学び方を自分で設計できるため、そうした個性を活かしやすいのです。
「やりたいことが見つかったからこそ、大学に行きたい」という気持ちがあれば、大学生活の未来は明るいものになるでしょう。

不登校だったお子さんが、やりたいことを見つけて大学生活を楽しんでいるという話は実際私もよく耳にしています。
大学に行くための選択肢とは?

では実際に、大学に進学するにはどのようなルートがあるのでしょうか?
大前提として、大学を受験するには「高校卒業」あるいは「それと同等の資格」が必要になります。
通信制高校を活用する
通信制高校は、不登校の子どもたちにとって最も現実的な選択肢の一つです。
- 登校回数が少ない(年間数日〜月数回)
- 自宅でパソコンやスマホを使って学習できる
- メンタルサポートやカウンセラーの体制が整っている学校も
- 卒業すれば「高卒資格」が得られ、大学受験が可能に
通信制高校に通いながら、自分のペースで大学受験の準備を進めている子も多くいます。

わが子もその一人です!
転入も可能なので、無理して全日制普通高校に通うより、大学受験を目指しやすい環境が作れることもあります。
現在、通信制高校は年々増加傾向にあり、学習形態・サポート内容・通学スタイルなどが多様化しています。
サポート校と一体型になっているスタイルの学校(通学を前提とした「サポート校併設型・通学型通信制高校」)も増えており、それぞれに特徴や得意分野があります。
また「通信制高校からでは学力的に大学進学は難しい」と思われがちですが、最近は受験に特化したプログラムを提供するサポート校も増えつつあります。

通信制高校のタイプについてはとても複雑です!別記事で詳しく解説していきます。
高卒認定試験(旧・大検)を受ける
「高校には通わず、最短で大学を目指したい」という人には、高卒認定試験(高認)という選択肢があります。
- 文部科学省が実施する国家試験
- 年2回(8月と11月頃)実施
- 合格すれば「高校卒業と同等」と認められる
- 合格した科目は持ち越し可能
この制度を使えば、高校に在籍せずに大学受験が可能になります。
黙々とひとりで勉強することが得意なタイプには特に適しています。
高卒認定試験は、テストの難易度は高くないものの、学習する教科も多く、1人で突破するには難しい現状があります。(合格率は50%といわれています。)迷うのであれば通信制高校への進学がよいと思いますが、もし認定試験合格を希望なら、サポート校(高卒認定コース)や家庭教師などを利用することをおすすめします。
大学の受け入れ体制は?


いくら大学に行きたくても不登校だった子を大学側が受け入れてくれるの?
と不安になる方もいるかもしれません。
入試を受けても、不登校の事実がマイナスに働いて不合格になるのではと心配することは自然の流れです。
でも、今の大学はとても柔軟で受け入れ体制も整ってきているといえます。
出席日数を選考の主要要素としない
一般入試は筆記試験の結果で合否が決定するため、出席日数は関係ありません。
また次の項目で上げる総合型選抜は、大学の評価項目によるところがありますが、欠席が多いことだけで不合格になるという事はありません。

指定校推薦は、在籍している高校が大学に推薦できる生徒を選抜して出願する仕組みです。
そのため、評定平均や出席日数などが選抜基準として重視されることがほとんどです。
個性が評価される総合型選抜がある
総合型選抜では、不登校でも通信制高校生でも不利になることなく、「その時間に何を学び、どう行動してきたか」、そしてこれから「学ぶ意欲があるのか」「将来のビジョンがあるか」を重要視している入試です。
評価項目の例
・志望理由書
・活動報告書
・面接やプレゼン
・ポートフォリオ提出 など
これらの評価項目は、文部科学省や大学入試センターが示す「多面的・総合的評価」の観点に基づいて実施されています。
この試験を利用すれば、不登校だった経験やその間に学んだこと(短期留学・ボランティア活動・社会貢献活動)、自分なりに工夫してきたことが大きな強みになります。それに加え、たとえば自宅での探究学習、読書、オンライン講座の受講、創作活動なども評価対象となり得ます。
評価項目や重視されるポイントは大学ごとに異なるため、志望校の選考基準をしっかり確認することも大切です。

調査書などに出席状況の項目がある場合には特に、欠席した時間に何をしていたか、在宅学習の実績などを具体的に示す必要があるでしょう。
配慮や支援体制も整いつつある
大学によっては、入試時や入学後のサポート体制も充実しています。
サポート体制の例
・別室受験の配慮
・カウンセリング窓口
・学習支援センターの設置 など
多くの大学が「合理的配慮」や「学生支援ガイドライン」に沿った支援を進めており、発達特性や精神的な配慮が必要な学生に対しても、相談体制が広がっています。
感受性の高い子どもたちにとって、安心して学べる環境が整ってきているのです。
それでもやはり不登校は不利?

大学に通えることはわかったけど、普通の学校に通っている子たちより不利なのは間違いないのでは?
それは確かに否定できません。特に以下の点で不利であると思います。
出席日数や内申点が足りないことは仕方ないので、指定校推薦はあきらめるしかありませんが、出席を重視しない「総合型選抜」や「一般選抜」があるのでそちらでチャレンジしましょう。
その他のデメリットに関しては、信頼できるサポーターに頼ってみるのも方法の一つです。
家庭教師や塾の先生など、学習面でサポートしてくれる存在がいると、道筋が見えやすくなり、安心して前に進めることも多いでしょう。
このサイトでは、そうした支援を受けながらの学び方だけでなく、「独学で大学を目指す方法」についても、紹介していく予定です。
「自分に合うやり方」を見つけていけるように、いっしょに探していけたらと思います。

わが子に関しては学びの習慣がないことが一番の問題に感じました。
学習計画を立てることも一人では難しい印象です。
不登校が大学を目指すのに有利な点はある?
逆に、不登校であることが大学を目指す上において有利に働くことがあるのでしょうか?
私は、『ある』と考えています。
それはとにかく自由になる時間があることです。
自由に過ごせる時間があることは次のような有利なポイントになります。
本当の好きが見つかる
私自身の経験ですが、大学(の学部・学科)選びを偏差値だけで決めたことを今も少し後悔しています。
大学卒業後しばらくして、臨床心理士という職業に興味を持ちましたが、すでに卒業した学部では必要な単位が足りず、ハードルが高いのが現実でした。
「なんとなく」で選んだ進路より、「これが好き」と思える分野を見つけることが、将来の後悔を減らしてくれるのではないでしょうか。
今の高校では、興味関心を軸に大学を選ぶ指導も進んでいますが、「自分の将来につながる好き」を高校生で見つけるのは難しいものです。
しかし、不登校の子どもたちは、他の子たちより時間があるからこそ、好きに気づけるチャンスがあります。
学校の枠から外れたことで、まわりの声に惑わされず、自分自身と向き合う時間を持てるのです。
ただし、自分自身と向き合うことは時に苦しく、劣等感と向き合うことにもなります。
無理をしない、 焦らないことが大切です。

子どもたちが自分で動き出すタイミングを見ながら後押しし、少しずつ進んでいけるといいですね。
必要な勉強に集中できる
たとえば、私立大学の入試では、英語・国語・社会(または数学)など、3教科で受験できるところが多くあります。
もしも全日制高校に通っていたら、テストや提出物、行事などに追われ、受験には直接関係ない教科にも時間を取られることも少なくありません。
その点、通信制高校や自宅での学習なら、自分に必要な教科にしぼって、じっくりと学ぶことができます。
焦らず、まわりと比べず、自分のペースで取り組むことができるのもメリットといえるでしょう。
その他時間があることで、英検やTOEFL、漢検などの資格にも挑戦しやすくなります。
特に英語資格は、最近では大学の入試制度(「英語外部試験利用入試」など)で評価されることも多く、英検のスコアが加点対象になったり、英語試験の代わりになったりします。
総合型選抜につながる経験ができる
さらに、時間があるからこそできる特別な経験もあります。
たとえば——
時間があるからこそできる特別な経験
・ボランティア活動
・オンラインでの海外交流・短期留学
・自主制作作品やポートフォリオの作成
・コンテストへの応募 など
これらは、いわゆる「総合型選抜」で評価される要素として、とても役立ちます。
単なる勉強だけでなく、「どんな想いでその活動に取り組んだか」「そこから何を学んだか」が問われる入試だからこそ、不登校の間に得た気づきや、自分なりの努力は大きな意味を持ちます。
自由な時間を、たくさん思考し、いろんな経験する機会として使えるのは大きな強みです。

総合型選抜では「不登校だったこと」自体は加点にも減点にもなりませんが、それをどう受け止め、どう活かしてきたかが大きく問われます。たくさん考え、行動したきた子どもたちにとってチャンスといえる選抜方式なのです。
興味あることに没頭できる
時間があることで、好きなこと・気になることに時間をかけて向き合うことができます。そしてそれは大学のみならず将来の職業につながることもあります。
イラストを描く、動画を編集する、ゲームやプログラミングに熱中する、料理やお菓子作り、音楽や読書に夢中になる……。
一見「趣味」に思えることも、実は今の社会では、大切なスキルや個性として評価されることがどんどん増えています。
今は 「好き」や「得意」が仕事になる時代 です。
YouTuberや動画編集者、eスポーツプレイヤー、○○専門家としてSNSやオンラインで活躍する人も少なくありません。
大学での学びがそれに合わせるようにとても多様化しています。
アニメやゲーム文化を専門的に学べる学科、心理学や芸術療法を深められる学部、環境・動物・スポーツ・食など、身近な「好き」が学問として成立しているのです。
熱中している一見無駄に見えるようなことでも、それが 将来や進学の大切なヒントになる可能性があります。
なので、自由な時間、好きなことに時間を気にせず没頭できるのは人生においてメリットなのです。
不登校を『自由な時間』と言ってもいいの?

学校に行けていないこと自体に、子どもも親も罪悪感を持ちやすく、その気持ちが重荷となり…

「自由な時間がある」なんて前向きなとらえ方はとてもできない・・・

難しいことですよね・・・私にもわかります。
でも親がまず“不登校=悪いこと”という思い込みを手放すことが必要です。
なぜなら、その思考は知らず知らずのうちに子どもにも伝わり、プレッシャーとなってしまうからです。
まだ回復しきっていないうちに、焦って無理に動き出すと、すぐに疲れ切ってしまい、また立ち止まってしまう——そんなことの繰り返しにもなりかねません。
子どもにまず大切なのは「回復の時間」をしっかり確保することです。
不登校の子どもたちは、学校での集団生活や環境のストレスのなかで、想像以上に心のエネルギーを使い果たしています。
ですから、無理に動き出させようとするのではなく、まずはしっかり休ませてあげることが最優先です。
そして、その「休息」が十分に取れたとき——
子どもは、自分の力で少しずつ動き出そうとします。
たとえば、「暇だな」と口にしたり、興味のあることに少しずつ手を伸ばし始めたり。
それは、エネルギーがたまってきたサインです。
このときこそが、親としての出番です。

「それって、こんなふうに学べる大学があるらしいよ」
「もしもっとやってみたかったら、一緒にできることあるよ」
そんなさりげない“後押し”が、子どもが次の一歩を踏み出す大きな支えになります。
親が焦らず「待つこと」、そして「動き出した瞬間に的確に後押しすること」——この2つのバランスがとても大切なのです。
そのためにも、親自身が“不登校=マイナス”というとらえ方から少しずつ離れていくことが大切です。

“不登校=マイナス”というとらえ方から離れていく…わかっていても難しいですよね…。まずは心の余裕をつくる、お子さんのことを考えない時間を作ることから始めてみるといいですよ。
そばにいつつ自分の時間をとる…在宅ワークという選択肢もあります。
まとめ
不登校という経験は、決して進学をあきらめる理由にはなりません。
むしろ、視点を変えれば、自分に合った学び方や将来の方向性を見つけるための大切な機会にもなり得ます。
現在では、多くの大学が出席日数を重視していなかったり、英語資格やポートフォリオ、面接など多様な方法での入試を取り入れていたりと、学力一辺倒ではない評価の仕組みが広がっています。
通信制高校や高卒認定試験などを活用すれば、高校に通えなくても大学受験の資格を得ることは十分に可能です。
大学は「みんなと同じであること」よりも、「自分らしく学び、成長すること」が求められる場所。
だからこそ、自分のペースで育んだ興味や経験が、大学進学やその先の人生で大きな強みになります。
「不登校=ネガティブ」という固定観念にとらわれず、自分の「好き」や「可能性」に素直に向き合っていけると、新しい道が必ず開けてきます。